韓国・プクの修理(改造?)〜
(オークの数奇な運命:ウイスキー樽→プランター→太鼓胴)      Return
☆以前管理人が息子の和太鼓の練習用に韓国・ソウルの太鼓店・ハンウリムで購入した、直径45cmの大きなプクです。 韓国のサムルノリなどで使用される太鼓です。 独特の音が気に入って「はらから」が演奏にも使っていましたが、ついに修理が必要になりました。プクは1cmくらい厚さの松の板を曲げて張り合わせて作ってありますので、軽くて片手で持つことが出来るのですが、和太鼓のように激しく打ち込むことを想定して作られていません。 従ってバチで縁を打ったりすると簡単に割れてしまいます。 よく見ると革はまだしっかりしているので、なんとか修理しようと思います。 出来れば少々縁打ちしても大丈夫なように、頑丈にしようと思います。 まあプク風1尺5寸平太鼓を狙ってみましょう。

☆前々から、一度ウイスキーの古樽を使った長胴太鼓にチャレンジしたいと思っていたのですが、なかなかその機会が訪れないでいました。この度、具合よくプクを修理する機会を得ました。 打面の直径は1尺5寸ほどですので、これに適当な胴を組み合わせれば、、、と思っていたら、ホームセンターにウイスキーの古樽をカットして作ったプランターを販売してるのを見つけました。 「ふふふ、このプランターをバラして、プクを修理すれば、ウイスキー樽を使った工作の練習にもなるし、強度とか、加工しやすさとかの確認が出来るわい」と、にんまりしたのでした。

■←これが今回修理するプクです。数年前の写真ですのでまだ綺麗です。今回写真は撮り忘れましたが、縁が大きく欠けて、使えなくなりました。このプクのロープを外し、革を胴から外して、別に作った胴に革を張り替えれば修理完了です。 幸いなことに革は大丈夫でしたので、なんとか修理してみようと思います。

・プクは大小2個家にありますが、中を見るのは初めてです。ちょっと楽しみでもあります。
で、中を見たら、なんにも無し。板が茶色っぽい接着剤で貼り付けてあるだけ。補強とかは一切無し。 歌口にプラスチックで出来た丸い45cm直径の枠がはまっているだけでした。

・仕様:革面の直径45cm 胴の長さ 30cm
 ロープ径6mm
革の周辺には直径2mm位の鉄棒(太い針金)が縫いこんであって、ロープで強く引いても革が破れないようになっています。
ホームセンターでいろいろ材料を物色しましたが、杉や松又は輸入材などの軽めの板しかおいてなく、もっと頑丈な材料をと思っていたのですが見当たりません。で、結局この古いウイスキー樽から作られたプランターを発見したのでこれを使ってみることにしました。(価格は5980円)
・ウイスキー樽なら、オーク材と思われるので、樫、楢などの硬い木の仲間です。 硬いので加工は大変ですがしっかりした胴が作れるでしょう。まあ試しにやってみましょう。底辺の直径が45cmほどのが丁度良いので、お店にあった5〜6個の中から、板割れや腐れのない、綺麗な物を選びました。
・購入後採寸したら下部の直径約45cm、上部の直径は約52cm。 板の厚さは概ね2.3cm。ウイスキーの樽は製造工程で内部を焦がすと聞いていましたが、外側が焦げています。なぜでしょうね?一度古い樽をバラして、プランターとして裏表ひっくり返したのでしょうか? それとも古色を帯びたプランターとするために外側を焼いたのでしょうか?
 それにしては中が綺麗?
■←樽をバラす前に、順番通りに番号と、板の向きを書き込んでおきました。 樽の場合一枚一枚の板の幅は一定していません。 材料を無駄なく使用するため幅は揃えていないと聞いたことがあります。 と言っても、使われている20枚の打ち18枚はほぼ同一の幅です。 2枚はかなり狭くなっていました。 樽職人さんが、この2枚で樽の直径を調整したんでしょう。 

・番号を書き込んだら、ハンマーで裏板を打ち抜き、金属製のタガも外します。 この場合、タガは釘で固定されていましたので、釘も抜きます。

また、板と板の間に、金属製の波板状のカスガイのような物が打ち込まれていたので、これで怪我をしないように注意しながら作業します。また無理に力を入れて、板を割らないように気をつけます。
■→これがバラした板です。約6cm〜7cm幅の板が20枚ほど使われていました。 樽ですので、底面部分は幅が狭く、上に行くに従って幅が広くなります。従って隣り合わせに20枚を並べると写真のように、曲がってしまいます。金属板のカスガイみたいなものをノミで板を削って外したので、内部は結構凸凹になりましたが、後ほどカンナで削るので気にしません。
■←板と板が、金属の曲がった板状のもので止められていましたので、これを左右からノミで削って取外します。また、胴に数本の釘が打たれていましたので、これも注意しながら取外しました。 と言っても、釘の頭の小さなものだったので、上手く取外すことが出来ず、釘の周辺に2mmくらいのドリルで穴を4個開け、釘をペンチで抜きました。 残った穴は1cmの直径のドリルで綺麗に穴を開け直し、同じ直径の丸い棒を入れてボンドで固定しました。いずれにしても胴に金属が付いているとカンナ掛けの際に刃を駄目にしてしまいますので、注意深く観察し、全ての金属片を取り除きます。

・その後電動カンナで2.3cmくらいある厚さを1.5cmほどに削りました。 胴の直径を小さくしたくなかったので内側になる側を削りました。
板が湾曲しているのでちょっと削りにくいですね。

・次に、板の幅の狭い方に合わせて、板全体の幅を電動カンナで削ってそろえます。 次に続く
■→このプランターでは板の幅が上下で異なりますので、電動カンナで一定の幅に仕上げました。 板は接着面が斜めに切断されてますので、その角度を変えないように気をつけながら作業します。

・この角度に気をつけないと、最終的に丸い胴に仕上がらないのですが、板の幅が異なりますので、真ん丸の胴に仕上げるのは難しいです。

・その後、4枚ずつボンドで張り合わせます。 一人で作業していたので、20枚を一度に張り合わせることが出来ません。で、4枚ずつ張り合わせ、その後ボンドが乾燥しないうちに全部を張り合わせました。


・胴は30cm長さに仕上げるつもりです。張り合わせて乾燥させてから、上下を鋸で切断します。そうすると縁の平面が綺麗に出て、歌口処理が楽になります。 (上手く鋸で切断できればの話しですが。。)
Hirodonさんの知恵を拝借しました。
■←写真が前後しましたが、各板の上下2箇所に写真のように、1cm直径の穴を開け、1cm直径の丸い木の棒を打ち込んで補強としました。 この丸棒とボンドの強度に期待が掛かります。 注意して張り合わせる板の同じ場所に穴を開けないと、丸い捧が上手く入ってくれません。(失敗談!)

カンナで板を均一の幅に削ったつもりでも、やはり板の左右が多く削れてしまい、真ん中の幅が広くなりがちです。これをロープで締上げてボンドで固定しても、板の強度にボンドが負けて、ロープを外すと、板がはがれてしまいます。注意して板を均一に削る必要があります。(これも失敗談!)
■→4枚ずつボンドで接着した板を、丸い形に張り合わせ、胴の上中下を締め付けます。 今回は板がとても硬く、なかなか密着させることが難しかったのですが、手元にあったトラのロープを巻き、バチでぐるぐる締め上げました。 実際には、胴の上、中、下の三箇所を締め上げました。

・ここで大切なのは、ロープで締め上げた後、木槌やゴムヘッドのハンマーなどで胴の周りや縁を満遍なく軽く打ち、板と板が上手く収まるようにしてやることです。 板が上手く収まると、もう少し締め上げることが出来ますので、数回繰り返します。 バチが回転しないように、針金をロープに通して、バチを固定しました。

・内側から見てボンドが不足しているように思える場所には、たっぷりとボンドを塗り、はみ出してきたボンドは古雑巾でぬぐっておきます。


■← 一日おいて、ボンドが乾いた後に、外側を電動カンナで削りました。 その後、普通のカンナで削り、最後に角材に荒い紙やすりを巻いて、全体を磨いて仕上げました。 本来プクの胴は綺麗な丸みを帯びていますが、これはほぼずん胴です。

・胴内部に見える小さな金属の板は、胴からロープを外したら、板の接着面が「パキッ」と音を出してはがれてしまったので、再度ボンドを注入し、金属板で補強したものです。

・板が硬いので、板の面の仕上げが上手く出来ていないと、ボンドがはがれてしまいます。 心配なのでこの金属の板で割れた部分を補強し、全体には1cm幅の長い板をボンドとホッチキスで止めました。


寸法: 直径約44cm、胴長約30cm、板厚約1.5cm、板20枚
■→胴の補強の為に、幅1cmほどの板を胴の内側にグルリと回し、ボンドを塗り工作用ホッチキスで止めて接着しました。 でも幅1cmでは心もとないです。 出来れば3cm幅くらいの板が安心です。 一応胴内部の上、中、下の三箇所をこの板で補強しました。 (板が硬くてホッチキスも最後まで入ってくれません。仕方なくハンマーで打ち込みましたが、殆どが曲がってしまいました。)
・胴は、ケヤキ色水生ニスに墨汁を1〜2滴混ぜて少し暗い色にして3回ほど塗りました。 表面には焦げ跡が盛大に残っていますが、まあこれも「味」と思い、カンナ掛けとヤスリ掛けを適当に切り上げ、焦げ跡の上からニスを塗りました。 
焦げが結構よい感じを出しています。
・歌口は電動カンナで平坦仕上げをし(実際には気持ち程度角度をつけて削ります。この角度によって、ビビリ音の発生を防止します)、歌口内部はそのままですと綺麗な曲線になっていないので、電動グラインダーを身体にしっかり固定しながら丸くなるように仕上げます。最後に歌口にロウを均一に塗っておきます。
〜 修 理 完 了 〜
■革の打面を下にして風呂の床に置き、ぬるいお湯を張り、半日ほど置き柔らかくします。ロープ穴の部分とその周辺は、革を伸ばすときに切れては困るので、なるたけ乾燥したままにします。
・その後、柔らかくなった革の水滴を拭き取り、胴にかぶせ、ロープを通しバチなどを使いながら、なるたけ均等に締め上げます。
・一応締め上がったら、革に乗って(体重:95Kg!)、片面数分くらい足踏みし革を伸ばします。で、またロープをきつく張り〜を合計4回繰り返しました。 もう少し伸ばしたい気持ちもありましたが、いささか(大分?)疲れてきたのと、ロープを通している穴がだんだん怪しくなってきたので、ここで終了としました。
・乾燥させること5日、修理前大分たるんでいた革がしっかり張って、芯のある音になりました。 胴の重量と厚さが増したためか、所謂プクの軽め音に比べて力強い音になったような気がします。早く実際にバチで打つ音を聞いてみたいです。1尺5寸のプクが1尺5寸のプク風平太鼓に化けたかどうか、、、。

作業:平成17年1月8日〜10日 正味2日半の結構な重労働
■後日屋外で打ってみました。音は修理する前に比較するとタイトな感じになりました。悪く言えば余韻の少ない、固めの音です。胴がしっかりしたためと、革を引っ張りなおしたせいと思います。練習でもっと打ち込んで行けば、徐々に変わってくると思います。
最後に: 韓国の軽量級の太鼓、プクを硬く厚い板で作った胴に交換することで、どの程度音が変わるか、ちょっとした実験でもあります。重量は修理後8.3kg。 修理前は計っていませんが、多分3Kg以下。 もはや片手で下げて使用することは無理な重さとなりました。 革は厚手でしっかりしているので、胴の強度が上がれば、かなりの力打ちにも耐えてくれるものと思います。 プクの購入時の価格が、ソウルで約3万円(約30万ウオン)、今回の材料が約6000円。 3万6千円で1尺5寸のプク風平太鼓の誕生か。。。韓国までの飛行機代は。。。?

作成・記録・写真: 馬場パパ
All rights reserved (C) 2005 T.Baba